鈴木邦夫の明言

鈴木邦夫の明言 本当に自信があれば謙虚になれるはず  世の中が右傾化しているといわれる。安倍政権を支持する勢力には、排外主義をあらわにする極右的な思想の持ち主も少なくない。政権側も右翼的な政策を推し進めてきた。安倍政権の5年間で日本はどう変わったのか。今後、どうなるのか。民族派右翼の重鎮、「一水会」元最高顧問の鈴木邦男氏に話を聞いた。


  ――安倍政権や、そのコアな支持層は果たして「右翼」なのでしょうか。保守というより反動のようにも感じますが。  今の政権には反省がない。歴史を見る目がないというか、直面する勇気がないんでしょう。それは保守的な態度ではないと思います。例えば、東京裁判を見直すという。見直してどうするのか。もう一度、戦争をするとでもいうのでしょうか。


  ――ヘイトスピーチや排外主義的なデモも目立つようになりました。 僕は日本が好きだけど、そんなに立派な国だとは思っていない。どうしようもない失敗もしてきましたからね。それでもこの国が好きだと思うのが本当の愛国心ではないですか。今は政権中枢が率先して「侵略も虐殺もなかった」と過去から目をそらし、歴史をフィクションで糊塗しようとしている。民族間の憎悪をあおり、韓国や中国をバカにした本が書店に並ぶ。韓国を褒めたり、日本政府を批判すれば、非国民のように叩かれる。そんなものは愛国心でも何でもありません。




  ――安倍政権イコール国ではないのに、ちょっとでも政府を批判すると、国賊扱いですからね。


 しかし、「国のため」とか「私は愛国者」とか声高に言う人は偽物だと思いますよ。そういうのは、心の中で思っていればいい。行動を見て、周りが判断すればいいのです。外に敵をつくって支持を固めるのは、運動家の常套手段。政府や政党がそれをやるべきではない。


  ――この春から、小学校で「道徳」が教科化され、道徳心や愛国心に成績がつけられます。どうやって愛国心の有無を判断するのでしょう。

 愛国心に右翼も左翼もない。周りに迷惑をかけず、人に優しくしている人が一番の愛国者です。無理して「日本は素晴らしい」と言わなくてもいいと思う。物を贈る時も「つまらないものですが」と言ったり、愚妻や愚息という言い方をするのが日本の精神ですよね。本来は謙虚な文化なのに、今は自分で自分を褒めてしまう。自国のことも「愚国」「弊国」くらい言ってもいいのにね。会社だって、弊社と言うでしょ。本当に自信があれば、謙虚になれるはずですよ。



  ――そういうことを言うから、「自虐的だ」と右翼界隈から目の敵にされる?


 僕は母が宗教団体の「生長の家」に出入りしていた関係で、青春時代は生長の家の運動に情熱を燃やし、今の日本会議の連中とも一緒に学生運動をやっていた。対立して追い出されたけど、今はよかったと思っている。あのまま日本会議にいたら、視野狭窄になっていたでしょうね。


――日本会議の運動は、左翼に対する敵視が凝縮されたものに見えます。鈴木さんも「サヨクに転向した」と批判されていますね。 


 右でも左でも、同じ考えの人が集まると暴走する。批判は排除され、過激なことを言う人が支持を集めます。アナキストの竹中労の「人は弱いから群れるのではない。群れるから弱くなるのだ」という言葉を聞いた時、僕は最初、意味が分からなかった。「何言ってるんだ、弱いから群れるのだろう」と思っていた。でも、やはり群れるから無力になるんだということが分かってきた。



  ――日本会議は安倍政権を支える一大勢力基盤だといわれ、集団的自衛権の行使容認も、憲法改正も日本会議の悲願だと聞きます。  彼らは「三島事件」の絶望を味わっている。三島由紀夫が憲法改正を求めて自衛隊に決起を呼びかけ、後に自決したことがトラウマになっているのです。安倍政権の間にしか憲法改正のチャンスはないから、何としても成し遂げなければならないという強迫観念があるのでしょう。 自由のない自主憲法より、自由のある押し付け憲法



   ――現政権が目指す憲法改正についてはどう考えていますか。


 僕は、安倍首相の憲法改正には反対です。本来、憲法には夢や理想が必要なはずなのに、思想性もなく、ただ戦前に戻ろうとしているように見える。戦争であれだけの犠牲を払ったのに、教訓を生かせず、軍備を増強して国民の人権を抑圧するなんて愚かすぎます。僕は現行憲法は米国による「押し付け憲法」だと思っていて、自主憲法の制定には賛成だけど、自由のない自主憲法より、自由のある押し付け憲法の方がずっとマシだ。



  ――改憲派は家父長制の復活を目指しているように感じます。


 夫が働き、妻は家に尽くして、子どもを産み育てるという戦前の構図をつくりたいのでしょう。個人の自由を抑圧するこのシステムは、為政者にとって都合がいい。そのうち選挙権も一家で一票という形にしたいのかもしれない。そういう家の集合体を統治するのが「国家」という大きな家であり、トップの言うことに国民は従うべしという考え方です。


  ――道徳を教科化するなど、愛国心を植え付ける教育方針も、国家への忠誠心を養うためですね。


 実は、三島由紀夫は自死の2年前に朝日新聞で「私は愛国心という言葉が嫌いだ」と書いていました。「愛というなら分け隔てないはずで、《人類愛》というなら分かるが、《愛国心》というのは筋が通らない。愛国心は、国境で区切られてしまう」というのです。三島は徴兵制にも反対していて、「国防は国民の名誉ある権利であり、徴兵制にすると汚れた義務になる」と言っていた。50年前の三島の言葉は、今の我々に向かって言っているように感じます。


  ――愛国心は、上から強制するものではないということですね。



 韓国や中国に敵愾心を抱くとか、ヘイトスピーチの類いなんてのは愛国心とは別物です。1905年、日本が日露戦争に勝利した際、全権代表としてポーツマス条約の締結に臨んだ小村寿太郎外相は、賠償金も取れない勝利で帰国後に批判されることは分かっていた。しかし、「ここで戦争を終結させられるなら、帰国して殺されてもいい」「売国奴と罵られてもいい」という覚悟があった。こういう人が本物の愛国者でしょう。ところが、日本は日露戦争に「勝ったこと」にしてもらい、一等国に仲間入りして舞い上がってしまった。それで、ロシアよりはるかに強い米国に戦いを挑んでいった。愚かですよね。



――戦争を知らない世代ばかりになって、「戦争だけはしてはいけない」と言う政治家も減っているように感じます。

 反省がないから、戦前に戻ろうとする。慰霊は当然ですが、歴史を検証してただすのは危うい。天皇陛下は激戦地をめぐる慰霊の旅をなさっています。憲法も守っている。保守を名乗る人々が「憲法改正で天皇陛下を国家元首に」などと主張するのは、陛下のお気持ちをおもんぱかっているとは思えない。むしろ、ないがしろにしているのではないか。


  ――安倍政権が終われば、戦前回帰を望むような妙な空気は消えるのでしょうか。


 仮に安倍首相から次のトップに交代しても、自民党政権の間は“強い明治”への回帰路線は変わらないでしょう。国民もそれを求めているのだと思います。



  ――国民が求めている?


自信を持てない人たちは、国家が強くなれば自分たちも強くなるような錯覚を抱いている。それで、「中国や韓国は許せない」と拳を振り上げたり、ゲーム感覚で「北朝鮮をやっつけろ」と戦争をあおるようなことまで言い出す。政治家は、そういう国民受けを狙って、強い言葉で隣国や外国人を非難するようなことを言えば愛国者として支持されると思っている。お互いの相乗効果で、憎悪にまみれた偽物の愛国心が幅をきかせているのが現状ではないでしょうか。


(聞き手=本紙・峰田理津子) ▽すずき・くにお 1943年福島県生まれ。早大政経学部卒。学生時代から右翼運動に関わり、72年に民族派右翼の「一水会」を結成。99年まで代表を務めた。著書に「新右翼<最終章>」「失敗の愛国心」「言論の覚悟 脱右翼篇」など。
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京都 介護社会に問いかける

真冬のその日、母親との最後の食事を済ませ、思い出のある場所を見せておこうと母親の車椅子を押しながら河原町界隈を歩く。やがて死に場所を探して河川敷へと向かった(※写真はイメージ)  2006年2月1日、京都市伏見区の桂川の遊歩道で、区内の無職の長男(事件当時54歳)が、認知症の母親(86歳)の首を絞めて殺害、自身も死のうとしたが未遂に終わった「京都・伏見認知症母殺害心中未遂事件」をご存じだろうか。  一家は両親と息子の3人家族だった。1995年、父親が病死後、母親が認知症を発症。症状は徐々に進み、10年後には週の3〜4日は夜間に寝付かなくなり、徘徊して警察に保護されるようにもなった。長男はどうにか続けていた仕事も休職して介護にあたり、収入が無くなったことから生活保護を申請したが、「休職」を理由に認められなかった。  母親の症状がさらに進み、止む無く退職。再度の生活保護の相談も失業保険を理由に受け入れられなかった。母親の介護サービスの利用料や生活費も切り詰めたが、カードローンを利用してもアパートの家賃などが払えなくなった。長男は母親との心中を考えるようになる。  そして2006年真冬のその日、手元のわずかな小銭を使ってコンビニでいつものパンとジュースを購入。母親との最後の食事を済ませ、思い出のある場所を見せておこうと母親の車椅子を押しながら河原町界隈を歩く。やがて死に場所を探して河川敷へと向かった。 「もう生きられへんのやで。ここで終わりや」という息子の力ない声に、母親は「そうか、あかんのか」とつぶやく。そして「一緒やで。お前と一緒や」と言うと、傍ですすり泣く息子にさらに続けて語った。「こっちに来い。お前はわしの子や。わしがやったる」。  その言葉で心を決めた長男は、母親の首を絞めるなどで殺害。自分も包丁で自らを切りつけて、さらに近くの木で首を吊ろうと、巻きつけたロープがほどけてしまったところで意識を失った。それから約2時間後の午前8時ごろ、通行人が2人を発見し、長男だけが命を取り留めた。  京都地裁は2006年7月、長男に懲役2年6月、執行猶予3年(求刑は懲役3年)を言い渡した。  裁判では検察官が、長男が献身的な介護を続けながら、金銭的に追い詰められていった過程を述べた。殺害時の2人のやりとりや、「母の命を奪ったが、もう一度母の子に生まれたい」という供述も紹介すると、目を赤くした裁判官が言葉を詰まらせ、刑務官も涙をこらえるようにまばたきするなど、法廷は静まり返った。  判決を言い渡した後、裁判官は「裁かれているのは被告だけではない。介護制度や生活保護のあり方も問われている」と長男に同情した。そして「お母さんのためにも、幸せに生きていくように努力してください」との言葉には、長男が「ありがとうございます」と応え、涙をぬぐった。
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買い物弱者

4月14日、総務省は2016(平成28)年10月1日時点の人口推計を1億2693万3000人(外国人を含む)と発表しました。この結果から、日本の総人口は2008(平成20)年をピークに約110万人減少したことになります。 日本の将来推計人口公表、1億人を下回るのは2053年に。前回推計より5年遅く  人口減少は社会や経済など、さまざまな分野に影響を及ぼします。それらは、私たちの暮らしに直結することもあります。そのひとつが、買い物です。日々、私たちは食料品をはじめシャンプーやトイレットペーパーといった日用品などを近所のスーパーや商店で購入しています。近年、生鮮食料品や日用品類を購入する店が相次いで閉店しているのです。  そのため、これまで当たり前のように購入できた日用品や生鮮食品が、簡単には手に入らなくなりつつあります。こうした社会状況に行政も動き出しました。 急増する買い物弱者 車がない若者や乳幼児の子育て世代も  「地域に根差したスーパーや商店が撤退・閉店している要因には、少子高齢化や人口減少、ネット通販の隆盛、大規模小売店による競争激化、後継者不在など、さまざまです」と話すのは経済産業省商務情報政策局流通政策課の担当者です。  経産省では日用品の買い物に不便をきたす人たちを買い物弱者と位置づけていますが、買い物弱者が行政課題として認識されるようになったのは約10年前まで遡ります。経産省は2009(平成21)年度に調査を開始し、2010(平成22)年に報告書を作成したのです。  当時、経産省は全国の買い物弱者を約600万人と推計。ところが、ここ数年間で社会状況は目まぐるしく変化しました。最近の調査で買い物弱者は100万人も増えて、約700万人と推計されています。  「700万人という数字は、あくまでも65歳以上の高齢者で日々の買い物に困っている人です。地方在住でありながら自動車免許を保有していない若者や乳幼児を抱えているために買い物で遠くまで出かけることができないパパ・ママなども買い物弱者といえます。そうした人たちを含めると、全国に1000万人程度の人たちが買い物弱者となっている可能性があるのです」(同)。 地価が高いため、小売店が出店できない。23区でも目立ち始めた買い物弱者  これまで買い物弱者を多く抱えていたのは、過疎化が進んでいる地方都市と思われがちでした。そのため、買い物弱者対策は地方の問題として受け取られていました。しかし、近年は東京23区内でも買い物弱者が目立つようになってきています。  都心部では生鮮食品を扱うコンビニやネット通販も登場し、宅配サービスをしているコンビニやスーパーも増えています。東京都心部なら生鮮食品や日用品の調達には困らず、買い物弱者問題は改善してきているような気もしますが……。  「そうした店舗によって、買い物弱者問題が解決したエリアも一部にはあります。しかし、都心部は地価が高いので、生鮮食品などを扱う小売店は採算面から出店しにくい環境にあります」(同)。 単身高齢者の急増、エレベーターのない団地、都心の生活スタイル……多様化する原因  さらに、東京では単身高齢者が急増していることも買い物弱者が増えている要因です。単身高齢者が買い物弱者であることは言うまでもありません。また、昭和30〜40年代に建設された団地には5階建てでもエレベーターが設置されていないところが多く、高層階の住民が高齢化することで買い物弱者になってしまうケースもあります。  買い物弱者になるのは、高齢者ばかりではありません。都心部では普段の移動は鉄道などの公共交通を使うライフスタイルが定着しているため、日常の買い物は徒歩圏内で済ませるのが一般的です。近所の商店が閉店してしまえば、食料品・日用品を生活圏で購入できなくなります。  自動車を保有していなければ、健康的な若者でも買い物弱者に転落してしまいます。つまり、買い物弱者は、必ずしも地方都市だけの問題、高齢者の問題ではないのです。 地域の実態に合わせた対策必要  「買い物弱者が発生する要因は、千差万別です。そのため、その地域の実態に合わせた対策を探らなければなりません」(同)。  経産省では、買い物弱者対策のために自治体や民間事業者と協力してコミュニティバスを運行して買い物を支援することや移動販売車に地域を巡回してもらうなどの施策を講じています。バスを運行する場合はルートや曜日・時間の調整、移動販売車だと、どういった商店がなく何を販売するのがいいのか、といったことなど、地元の自治体や町内会などと協議・調整する項目も多岐にわたります。  「NPOや町内会に協力を仰ぎ、買い物の付き添いや代行サービスをおこなっている自治体もあります。そのほか、自治体が出資する第3セクターや公社が、生鮮食品や日用品を扱う店を出店することもあります。買い物難民対策は、地域の実情によって支援の内容が異なります。簡単には解決しない問題です」(同)。  買い物弱者対策が複雑に絡み合っていることは、経産省のほかにも、所管する官庁が内閣府・総務省・国土交通省・農林水産省・厚生労働省の1府5省にまたがっていることからもうかがえます。行政ばかりではなく、民間事業者・NPO・町内会など、買い物弱者対策は官民一体で取り組む必要に迫られています。  小川裕夫=フリーランスライター
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田岡さんのコメント

 4月6日、7日のフロリダ・パームビーチでの米中首脳会談翌日の8日、米太平洋艦隊は原子力空母「カールヴィンソン」(9万3000t、約60機搭載)を北西太平洋に派遣すると発表した。同艦は3月からの米韓合同演習「フォール・イーグル」に参加後シンガポールに寄港、オーストラリアを親善訪問する予定だったが、俄かに朝鮮半島周辺海域に向かった。  米中首脳会談では双方とも「北朝鮮の核・ミサイル開発が深刻な段階に達した」との認識を示し、「国連安保理の制裁決議の完全な履行」で一致したが、具体的な方策は決まらなかった。トランプ大統領は「米国が独自の行動を取る可能性」を示唆し、その姿勢の表明として空母を派遣した、と見られる。  だが、米国にとっても北朝鮮に対する攻撃は第2次朝鮮戦争に発展する公算が大で、米軍、韓国軍に多大の人的損害が出るのみならず、韓国と北朝鮮に致命的な災禍をもたらすから、空母派遣も北朝鮮と中国に向けた一種の政治的ジェスチャーに過ぎないだろう。ただし、威嚇が効果をあげない場合、トランプ大統領は振り上げた拳を振り下げざるをえない立場になる危険はある。  全面的攻撃ではなく、北朝鮮の首脳部や指揮中枢に対する特殊部隊の急襲が検討されている、と報じられるが、要人の所在もリアルタイムで知ることは極めて困難、これも全面戦争の口火となる公算が高く現実性は乏しい。 ● 過去にも核施設攻撃を検討 米韓の被害も大きく諦める  米国は1994年にも北朝鮮の核施設に対する 「外科手術的攻撃」(surgical strikes)を検討した。1990年にソ連は北朝鮮を見捨てて韓国と国交を樹立、92年に中国もこれに続いたため、孤立した北朝鮮は核開発を始め、93年にはNPT(核不拡散条約)脱退を宣言した。  のち脱退は留保したが、査察には非協力的で、核兵器製造を目指している疑いが濃厚となった。このため93年1月に発足したクリントン政権では寧辺(ヨンビョン)の原子炉や使用済み燃料棒からプルトニウムを抽出する再処理施設を航空攻撃で破壊すべきだ、との声が高まり、米軍はその命令が出た場合に備えて、計画、準備を始めた。  だが在韓米軍司令部では、「核施設を攻撃すれば北朝鮮は朝鮮戦争の停戦協定は破棄されたとして、戦争再開となる公算大」との見方が強かった。ソウル北方約40kmの停戦ライン(南北境界線)のすぐ北には、朝鮮半島を横断する全長約230km、奥行き約30kmの地下陣地が朝鮮戦争中、中国軍によって築かれ、米軍の猛攻撃に耐えた。  北朝鮮軍はそこにトラックに乗せた22連装の240mmロケット砲(射程60km)や、170mm長距離砲(同40km)など、砲2500門を配備していると見られた。戦争が再発すれば、韓国の人口の3分の1以上が集中するソウル首都圏が「火の海になる」との北朝鮮の呼号はあながち虚勢でもなかった。  核施設を攻撃するなら、その以前か同時にこの大要塞地帯を制圧する必要があり、大規模な地上戦となる。在韓米軍による損害見積もりは、「最初の90日間の死傷者は米軍5万2000、韓国軍49万、民間人の死者100万以上」と出た。  この報告は航空攻撃だけを考えていたワシントンの政治家、高官らに冷水を浴びせた。クリントン政権は攻撃を諦め、カーター元大統領に訪朝し金日成主席と会談するよう要請した。この会談で北朝鮮は核兵器開発を凍結し、見返りに米国は軍用の高純度プルトニウムが抽出しにくい軽水炉を供与する、などの合意が成立、戦争の危機は回避された。 ● 弾道ミサイルの監視は不可能 日本にも大量の避難民  今日、「外科手術的攻撃」はその当時よりはるかに困難でリスクが大きい。原子炉や再処理施設は大型で空から丸見えだから航空攻撃で破壊するのは容易だったが、核弾頭はどこへでも隠せる。「核の弾薬庫はこのあたりにあるらしい」との情報もあるが詳細な位置は分からないし、本当かどうかも怪しいうえ、移動するのも簡単だ。  相手の反撃能力も弾道ミサイルになって格段に高まった。これを先制攻撃で破壊しようとしても、移動式発射機に載せて山間部のトンネルに隠し、出て来るとミサイルを立てて発射するからどこにあるか分からない。偵察衛星は地球を南北方向に1周約90分で周回し、地球は東西方向に自転するから、世界各地上空を1日約1回通るが、時速約2万8000kmだから北朝鮮上空は1分程で通過する。宇宙センターや飛行場、造船所など固定目標は撮影できるが、移動目標の監視は不可能だ。  静止衛星は赤道上空を高度約3万6000kmで周回するから、地球の自転の速度と釣り合って止まっているように見える。電波の中継には便利だが、地球の直径の約2.8倍も離れた距離にあるからミサイルは見えず、その発射の際に出る赤外線(熱)を感知できるだけだ。  最大高度が2万mに近いジェットエンジン付きグライダーのような無人偵察機「グローバル・ホーク」を多数投入し、交代で北朝鮮上空を旋回させておけば、発射機が出て来てミサイルを直立させる光景を撮影することは可能だが、平時にそれをやれば領空侵犯だし、低速だから北朝鮮の旧式ソ連製対空ミサイル「SA2」(射高2万5000m)でも容易に撃墜される。公海上空だけを飛ばせるのでは、多くが北部山岳地帯にあるとされる弾道ミサイルは発見できない。  また先制攻撃で仮に一部の弾道ミサイルを破壊できたとしても、相手はすぐさま残ったミサイルを発射して来るから、ほぼ同時に全てのミサイルを破壊しないと危険で、それは至難の業だ。1994年に核施設攻撃を検討した際と同様、ソウルなどを狙う前線のロケット砲、長距離砲を処理するためには、地上戦で敵の陣地を潰して行くことも必要となるだろう。  もし戦争になれば北朝鮮には最終的な勝ち目はないから、「死なばもろとも」の自暴自棄の心境となり、韓国の都市や米軍、韓国軍の基地だけでなく、横須賀、佐世保の両港や嘉手納、三沢、横田、岩国などの米軍飛行場に核ミサイルを発射する可能性は十分あるし、東京などを狙うかもしれない。  仮に幸い日本が直接攻撃を免れたとしても、韓国から途方もない数の避難民が押し寄せることになろう。韓国への融資、投資は回収不能となり、その復興に巨額の寄与を迫られることになるだろう。日本では「米軍が北朝鮮を叩きつける」と期待し、それを快とする言動もあるが、戦争を現実的に考えない平和ボケのタカ派の発想だ。 ● 韓国は精鋭特殊部隊編成 要人の動向を把握するのは困難  第2次朝鮮戦争にならずに問題を解決する手法として、米国、韓国では特殊部隊の潜入で北朝鮮首脳部を処理して体制変革を図る、とか指揮、通信機能を麻痺させてミサイル発射を防ぐ、という策も論じられる。3月からの米韓合同演習「フォール・イーグル」にはオサマ・ビン・ラディンを殺した米海軍の「ネービー・シールズ」や陸軍の「デルタ・フォース」も参加し、その演習がテレビで放映された。韓国軍も「斬首作戦」のために1000名の精鋭特殊部隊を今年中に編成する計画という。  だが要人の所在をリアルタイムでつかむことは極めて困難だ。O・B・ラディンの殺害は米、英軍が2001年10月にアフガニスタンを攻撃してから10年後だった。米、英軍は2003年3月にイラクを占拠したが、サダム・フセインの拘束は9ヵ月後の12月だった。  地下30m、コンクリートなら6mを貫通する電柱状の爆弾、「バンカーバスター」などで地下の司令部や通信中枢を破壊しようとしても、相手は他の地下壕に移っている可能性があるし、一時的に通信が途絶しても復旧すればミサイルを発射するだろう。  特殊部隊による暗殺や破壊活動は、もし本当にやる気なら、極秘で計画、準備するものだ。そうでなければ相手は警戒して隠れ家を転々としたり、影武者を用意したりするなど、対抗策を取るからだ。「斬首作戦」を公言したり、演習を公開したりするのは、それを実行する気がないことを示している。あまりにも単純な威嚇だろう。 ● 失敗した「生かさず殺さず」 米中ともに妙策なし  トランプ大統領の大胆な「独自の行動」としては金正恩委員長との直接対話も考えられる。だが会談でトランプ大統領が最大限の譲歩を示し「米国は北朝鮮と国交を樹立し、その安全を保障する。経済援助もするから核を廃棄しろ」と説いても、相手はいまや存立の唯一の頼りである核を捨てそうにはない。せいぜいが、「米国に届くICBMの開発は凍結する」と言う程度だろう。それでは日本や韓国は「我々はどうしてくれる」と反発する。米国内でも「無法者に褒美を出すのか」と非難が高まるだろう。  中国が1992年に韓国と国交を樹立して以来、北朝鮮に対し続けてきた「生かさず殺さず」政策は、北朝鮮が自暴自棄になって暴発することを防ぐ効果があり、穏当な策ではあったが、所詮は問題の先送りだ。その間に北朝鮮は核・ミサイル開発に成功したのだから、これも失敗と言う外ない。この難題を解く妙策はトランプ大統領、習金平国家主席だけでなく、誰にもないのでは、と暗然たる思いを抱かざるを得ない。  (軍事ジャーナリスト 田岡俊次)
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清和会と経世会

★代表的な日本の政治家の死を一覧で眺めると、 『清和会に対立した経世会の末路』   (田中派)田中角栄 逮捕 ロッキード事件 (←東京地検特捜部) (経世会)竹下登  失脚 リクルート事件 (←東京地検特捜部) (経世会)金丸信  失脚逮捕 佐川急便献金・脱税 (←東京地検特捜部&国税)  (経世会)中村喜四郎 逮捕   ゼネコン汚職 (←東京地検特捜部) (経世会)小渕恵三 (急死)(←ミステリー) (経世会)鈴木宗男 逮捕 斡旋収賄 (←東京地検特捜部) (経世会)橋本龍太郎 議員辞職 日歯連贈賄事件 (←東京地検特捜部) (経世会)小沢一郎  西松不正献金事件 (←東京地検特捜部) (経世会)二階俊博  西松不正献金事件 (←東京地検特捜部)   (清和会)岸信介    安泰 (清和会)福田赳夫   安泰 (清和会)安倍晋太郎  安泰 (清和会)森 喜朗    安泰 (清和会)三塚 博   安泰 (清和会)塩川正十郎  安泰 (清和会)小泉純一郎  安泰 (清和会)尾身幸次   安泰 対米従属派である清和会の政治家と違い、国益を重視して米国と一線を画して近隣アジア諸国などと独自の繋がりを模索しようとした経世会の政治家は、悉く失脚もしくは殺害の末路を迎えている。 中川昭一の父親である中川一郎氏も、日本の近隣大国であるロシアからの、「米国石油メジャーとは別口ルートでの」原油輸入を画策し、入浴中、絞殺された。
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森友問題

ShareTweetPinMail 庶民の味方というイメージ  童顔で、時折かわいらしい笑顔を見せる。夫と仲良さそうに手をつなぎ、どこへでも出かける。突拍子もないことをすることもあるけれど、なんとなく憎めない。  「いろんな人とお話ししたい」といって居酒屋を開く。反原発の飯田哲也さんに教えを請う。沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設反対運動の現場を、ミュージシャンの三宅洋平さんに頼んで案内してもらう…。  選挙区の地元にいて、夫の不在中は後援者たちの間を回って支持をお願いし、地域の祭りや催しにもこまめに顔を出す。決して出しゃばらず、夫を陰で支え続ける。そんな旧来の保守政治家の妻というイメージからはほど遠い、明るくて活発で、自分なりの意見をしっかりと持ち、なんにでも興味を持つ、溌溂とした新しいタイプの政治家の妻という印象。それが安倍昭恵さんである。  この“庶民的”なイメージが、一般にかなり浸透していることは間違いない。それも、高止まりしていると言われる安倍内閣の支持率に、いい影響を与えているのだろう。最高権力者の夫にも、臆することなくずけずけとモノを言う“庶民の味方”というイメージ。  しかし、どうもそのイメージは疑わしい。  安倍昭恵さんは森永製菓社長の娘で、聖心女子専門学校卒のお嬢様。まあ、庶民の出、とはちょっとばかり育ちが違う。その後、立教大学大学院を経て、いま問題の「電通」に勤務したという。  お嬢様育ちの奔放さは持ち合わせているのかもしれない。前述したように、自民党の原発政策には疑問を持ったというし、沖縄問題にも関心を寄せたらしい。他にもTPPや消費増税などについても、夫の晋三氏とは違う意見で議論を交わしたこともあるという。  それらのことをもって、自ら「家庭内野党」と称し、言いたいことを言い合える良き夫婦像を演じてきた。だが、実像がほんとうにそうだったのか。どうもそこがウサン臭いのだ。 化けの皮が剥がれた…?  化けの皮が?がれたのではないかと思う。例の「瑞穂の國記念小學院」(旧字体を使うところに意味があるらしい)の件がそれを示している。  昭恵さんは、この学校の「名誉校長」に就任している。そのホームページには「ごあいさつ」として、昭恵さんの次のような言葉が掲載されている。  籠池先生の教育に対する熱き想いに感銘を受け、このたび名誉校長に就任させていただきました。  瑞穂の國記念小學院は、優れた道徳教育を基として、日本人としての誇りを持つ、芯の通った子どもを育てます。  そこで備わった「やる気」や「達成感」、「プライド」や「勇気」が、子ども達の未来で大きく花開き、其々が日本のリーダーとして国際社会で活躍してくれることを期待しております。  籠池先生とは、学校を経営する「森友学園」の籠池泰典理事長のことで、昭恵さんの文章は、この学校の教育理念への、まさに手放しの礼賛である。では、その教育理念とはどんなものか。それこそが、いま問題化している右翼教育なのだ。  例えば、この森友学園が経営する「塚本幼稚園」では、園児に軍歌を歌わせ、教育勅語を暗唱させている。その映像は、ツイッター等でたくさん流出しているので、誰にでも確認することができるが、まるで軍国教育である。  さらに、この幼稚園が保護者あてに配布した文書が「ヘイトそのもの」だとして問題になっている。なにしろ、文書の中に「よこしまな考えを持った在日韓国人や支那人」といった表記が出てくるのだから驚く。  「ヘイトスピーチ規制法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)」が昨年の国会で成立している。その法律の趣旨は、要約すれば次のようなものだ。  「ヘイトスピーチ規制法」とは、日本以外の国や地域の出身者への不当な差別的言動を解消するための基本理念を定めた法律。日本以外の国や地域の出身者とは、以下のふたつに該当するもの。  ◎日本国外にある国、もしくは地域の出身者、またはその子孫  ◎日本の国に適法に居住しているもの  これらの定義に当てはまる人に対しての「差別的言動」とは、  差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身者であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動すること。  などと定義されている。  この法律の趣旨に照らせば、なんら証拠もなく「よこしまな考えを持った在日韓国人や支那人」などと言及して「本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動」する文章は、典型的なヘイトスピーチというしかない。それを公に配布するのだから、この学園の教育方針そのものに疑問符が付くのは当然だろう。さすがにこの文書は大阪府の私学課も問題視し、塚本幼稚園側に事情を訊いているという。  その学園の理事長が籠池氏なのだが、前掲のように、安倍昭恵さんはその籠池氏の「教育に対する熱き思いに感銘を受け」たと、はっきりと書いているのだ。つまり、ヘイトスピーチまがいの文書を配布した学園の教育理念に、昭恵さんはもろ手を挙げて賛同しているわけだ。  それは、昭恵さん自身が「ヘイトスピーチに加担」したことと同じではないか。  昭恵さんは「家庭内野党」を標榜する。だが、それは世を欺く仮の姿、本音としては、晋三氏にベッタリの極右思想の持主でしかないのだろう。  なんのかんのと少しは抵抗するそぶりを見せながら、結局最後には、安倍自民党の言いなりになってしまう公明党の役割と同じではないか。「家庭内野党」ではなく「家庭内公明党」と名を変えたほうがいいと思う。 公教育の否定…  さらに昭恵さんには、驚くべき発言がある。  テレビ東京「ゆうがたサテライト」(2月17日)が報じたのだが、昭恵さんはこの学校の保護者会において、名誉校長就任の挨拶として、次のように話している。  普通の公立学校の教育を受けると、せっかくここで芯ができたものが(公立)学校へ入ったとたんに揺らいでしまう。日本の国を誇りに思えるような子どもたちがたくさん育ってほしい…。  現首相の夫人が、ほとんど公教育を否定するかのような発言をしているのだ。一般の公立小学校へ入学すれば、せっかくの塚本幼稚園での“教育”が揺らいでしまう、という。よく考えると、これはそうとうに恐ろしい(というより、危険な)発言だと思う。  この小学校は当初「安倍晋三記念小学校」と命名する予定だったという。そんな学校に、まるで現在の日本の公教育を否定するような“名誉校長”が誕生したのだ。夫・晋三氏の名を冠する予定だった小学校の名誉校長に、その妻が就任する。そして妻は、ヘイトスピーチ的な言動をする理事長の教育理念とやらを最大限の言葉で褒めたたえる。  不穏を通り越して、危険だ。 結局は、同じ穴のムジナ夫婦  この小学校の土地払い下げに関しては、すでに多くの疑惑が吹き出ている。これからどんどん疑惑の芽は膨らむに違いない。さすがにマスメディアも、恐る恐るではあるが、動き出している。なにしろ、時価9億円相当の土地に、現在まで森友学園が支払った額はたった200万円だというのだから、どう考えたって怪しい。  安倍首相は「払い下げに関して、もし私や妻や事務所が関わっていたことが分かったら、私はすぐに総理も議員も辞職する」と、国会審議の場で大見得を切った。もしかしたら、言ってしまってから「まずいことを言ったな」と後悔しているかもしれないな、これは。  この学校の設立資金を集めるのに「安倍晋三記念小学校」という名の「振込用紙」が使われていたことが判明している。関係ないはずがない。それでも首相は「私はこれまで知らなかった」とシラを切る。さらに「その振込用紙が本物かどうか、調べようがないじゃありませんか」とまで言いつのる。  なんで調べようがないのか。調べる気になったら、籠池氏に1本電話すれば分かることじゃないのか。分かってしまったらヤバイことでもあるのかと、疑わざるを得ない。  その上、この学校の設置許可にも疑念が持たれている。  日本国の最高権力者の妻が名誉校長を務めるのだ。設置申請を受けた文科省や大阪府が、何らかの手心を加えたとしてもおかしくはない。いや、手心を加えないほうがおかしいというべきか。  マスメディアも、安倍昭恵さんを持ち上げるのは、もう止めたほうがいい。  この夫婦、結局は同じ穴のムジナだったということがバレてしまったのだから。
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緩和ケア…ひとりではない!

 <プロフィル 奥野 滋子( おくの・しげこ )  1960年、富山県生まれ。緩和ケア医。特定医療法人社団若林会湘南中央病院在宅診療部長。順天堂大学医学部客員准教授。麻酔・ペインクリニック医から緩和ケア医に転向。ホスピス、緩和ケア病棟、大学病院緩和ケアチームで全人的医療を実践し、約2500人の看取りを経験。患者からの「死んだらどうなるの」という問いをきっかけに宗教学、死生学を学ぶ必要性を感じ、東洋英和女学院大学大学院人間科学研究科修士課程を修了。「ひとりで死ぬのだって大丈夫」(朝日新聞出版)、「お迎えされて人は逝く」(ポプラ社)など著書多数。 br />

どんな人間にも必ず訪れる死。最近は、子や孫や親戚一同に囲まれた「絵に描いたような大往生」が減り、「孤独死」が増える傾向にある。見守っていた家族をひとりきりで死なせてしまい、後悔する人も少なくない。終末期のがん患者に寄り添う緩和ケア医として、これまで2500人以上を 看取 みと ってきた奥野滋子さんは、「ひとりで死ぬことが寂しいとは限らない。人生に満足し安心して旅立つ方も多い」と、人の最期に関する一つの考え方を提示する。



衰弱が進行し、入院していた。腹水で腹部は膨らみ、顔はやつれ、手足がやせ細っていて、自力では動くこともままならない。夫とは死別しており、子供がいないため独居である。母親は彼女が学生だった時に病死している。  ある朝の回診での出来事である。  「先生、昨日の夜、お母さんが会いに来てくれたんです」  「お母さんはそこの椅子(ベッド脇のソファ)に座って、窓の方を見ていて、全然私の方を見てくれないの。寂しかった。もっと近くに来てって言ったけど聞こえないみたいで」  「手を伸ばせば届くような気がするのに、手を差し伸べてくれない。私、お母さんに何か悪いことしたかな」  翌日の回診でも彼女は暗い顔をしながら、「お母さんはまだ私の方を見てくれない」「背中を向けたままずっとそこにいる」と話し、「早くこっちを向いてほしい」と訴えた。  翌々日の朝、彼女は非常にすがすがしい顔をして私たちを待っていた。  「先生、お母さんがやっと私の方を見てくれたの。とてもうれしい。お母さんが私の手をつかんでしっかり握ってくれたの。私、これできっとお母さんのもとに行けるのね。うれしい。先生、みなさん、いろいろお世話になりました。ありがとうございました。私は大丈夫です」  その日の午後、突然血圧が低下して意識がなくなり、夜に亡くなった。 人間はつねに死に向かって歩んでいる  私は16年間、緩和ケア医として、病院や在宅診療で訪れた患者の自宅などで多くの方々の死に触れてきた。今回は、その経験から思うことをお伝えしたい。死への怖れ、永遠の命への希求、親しい人との死別がもたらす悲嘆は、場所や時代を問わず、人間にとって共通の重要な問題である。日本は今や超高齢社会に突入し、医療の進歩により容易に死ねない時代となった。どこで生きてどこで死ぬのかを、個々人が具体的に真剣に考え、決定せざるを得ない状況にある。  高齢者だから死が近いということでは、もちろんない。実は、人生のどの段階も生と死は表裏一体であり、人間はつねに死に向かって歩んでいるといっても過言ではない。健康な人であっても、事故や事件など不慮の事態によって命を奪われることもあるのだから、まだ若いからと言って人ごとでは済まされないのである。



 現代は核家族化が進み、未婚や死別による独居家庭も増えている。たくさんの人が最期の迎え方として希望されるのが、テレビドラマのように家族親戚、友人たちに手を握られ、互いに感謝の言葉を伝え、コクッと静かに頭を垂れて旅立つという形だが、現在ではこれは非常に難しい。  独居の方なら、もともとひとりで死ぬという覚悟がある方も少なくないだろう。しかし、たとえ家族が一緒にいてくれる場合でも、24時間体制で付き添ってくれていた妻がトイレに行っている間に夫が息を引き取ることもあるし、隣で寝ていた夫が朝になったら冷たくなっていたということも、元気にしていた赤ちゃんが突然静かになって気が付いたら死んでいたということもある。誰かと一緒に死ぬということは不可能であり、最期は一人で旅立つことになると考えておいた方がよさそうである。  同時に、愛する人の最期に必ず立ち会えるという保証は誰にもできない。したがって、「たった一人で死なせてしまった」と後悔したり、親戚などから責められたりする必要はないのである。  ただ、全く誰とも縁がないとか、自分が生きた証しを残すこともできない「天涯孤独の最期」は、生きているうちの努力である程度回避できる。つまり、誰かと関わり、縁をつなぐ生き方をすること。もちろん単に出会いの数を増やすということではなく、たとえ1人でも2人でも、相手のことを深く考え大切にする気持ちを持って関われば、その人の心の内に自分の存在が記憶されていく。  そうした努力をしようと思ってもなかなか人と交わることが難しいと言う人はやはり、寂しいのかと言うと、そうでもないようだ。私がこれまで看取りをさせていただいたケースから見ると、「亡くなった方との再会」「お迎え」「先祖の存在」によって、安心して旅立つ人が少なくないからである。  もちろん実際に「お迎え」があるかどうかは私にはわからない。しかし「お迎え現象」というご本人が「見た」「聞いた」と感じられたお話はしばしば耳にしている。「お迎え現象」の中には、せん妄などの意識障害や認知力の低下などが影響している場合もあるかもしれないことはあらかじめお伝えしておく。 「共に」 (写真はイメージです) (写真はイメージです)  70歳、男性。大腸がん  独身。すでに治療は終了し、終末期と考えられた。腹水が大量にたまり腹痛、腹部膨満感、全身倦怠けんたい感があり、ほぼ一日中ベッドで横になっていた。以前は自分の意思表示も明確で医療者にも協力的であったが、亡くなる1か月ほど前から体調が悪いのか言葉を発しなくなった。こちらからの問いにはうなずくか、首を振ることでコミュニケーションはかろうじてとれるが、細かな体調や心の問題を把握できるほどではなかった。主治医や病棟スタッフはうつではないかと考え、抗うつ薬の投与が検討されていた。  ある日、私が彼の病室を訪れた時、机の上に「南無真如一如大般涅槃経」と書かれたメモ帳が置かれているのに気づいた。そこで「信仰をお持ちですか」と問うと、うなずかれた。「今、あなたの仏様はどこにおられますか」と問うと、「共に」と一言だけ答えられた。「心配なことはありますか」と問うと、首を横に振って返事をされた。  数日後、息を引き取った。





 50歳、女性。卵巣がん。  抗がん治療を続けてきたが効果なく、食欲不振、嘔おう気・嘔吐、腹痛、全身倦怠感、腹水などの症状が出て、下肢のリンパ浮腫が増悪し、自宅での生活がままならなくなり入院となった。  独身で、有名ブランド店の店長を任され、仕事一途いちずの生活を送っていたという。生きがいにしていた仕事を他人に預け、着替えや排せつなども看護師に任せなければならず、介助なしに生活を営むことが困難な状況になって、「こんな状態が長く続くのなら死んだ方がまし」「人に迷惑をかけてまで生きるのはいや」と言うようになった。  キーパーソンの姉に話を聞いたところ、父親は認知症のため施設に入所中で、面会に行った娘のこともわからない状況ということだった。母親は乳がんが脳に転移し別の病棟に入院中で、病状は厳しいとのことであった。  ある日、「母親が面会に来た」と言う。しかし、周辺でそのような人物を目撃した人はいなかった。数日後のある日の夕方、「母と温泉に行く話をしていた。今帰ったばかり」と話した。その頃から一人部屋にいて誰かに語りかけている姿が時々見られた。「お母さんを送っていく」と言ってベッドから立ち上がろうとして転倒したこともあった。  まもなくして、別病棟にいた母親が息を引き取ったと、連絡が入った。その後、約1週間で本人も永眠した。  姉は「母と妹は仲が良かったので、一緒に温泉に出かけたのかしら」と語った。 予想外の展開に後悔した娘さんに (写真はイメージです) (写真はイメージです)  72歳、男性。膵臓すいぞうがん終末期。  妻とは数年前に死別し、独居であった。主治医に積極的ながん治療はないと言われて、自宅で過ごしたいと退院してきた。週3回程度、片道約1時間をかけて長女が訪ねて来ていたが、彼女は仕事を持っており長居をすることはできず、父親に頼まれた用事を済ませるくらいの時間しかなかった。普段の彼の生活はヘルパー、訪問看護師、訪問診療スタッフ、薬剤師がサポートしていた。  ある日の夕方、トイレで真っ黒の便が大量に出た後、その場に倒れ込んでしまった。いつもと違う様子に、たまたま居合わせた娘は救急車を呼んで病院に担ぎ込んだが、その数時間後に静かに息を引き取った。父親は徐々に衰えて死んでいくのだろうと思っていた娘は、予想外の急激な展開に「もっと一緒にいてあげればよかった」とずっと後悔していたという。  「父の死が受け入れられない」と知り合いの僧侶に相談したところ、「お父さんは先祖の列に入られたのですよ。いなくなってしまったわけではなくて、これからはずっと他のご先祖さんたちと一緒にあなた方を守ってくれるのですよ」と言われ、安堵あんどしたという。 死から目を逸らさず今日一日を精いっぱい生きる  ここに挙げた方々にとって、「お迎え」に訪れる死者たちは必ずしも恐怖の対象ではなかった。出現のしかたや会話も自然で、恐怖や不安も感じていないように見える場合には、その人のもとに一緒に行きたいという希求と一種の安堵感のようなものが本人には生まれているのかもしれない。もしそうであるならば、「お迎え現象」は死の恐怖を乗り越える助けになり得るのかもしれない。  生理的な生には限りがあり、死は必至で不死の願いは叶かなえられない。死が避けられないとすると、生の意味を拡大解釈して死の苦悩を和らげようとする考えが出てくる。つまり死後生を願い、先祖となって家族、イエを守っていく存在となることも生の意味の拡大解釈の一つの形ではないだろうか。死の時でも先祖は見守ってくれているので、ひとりぼっちの寂しい最期はないと信じることもできるのかもしれない。  ありきたりの話になるかもしれないが、私たちはいつ最期を迎えるかはわからない。その時が迫ってから「孤独のうちに死にたくない」、「誰かに看取ってほしい」とジタバタする前に、死から目を逸そらさず、今のうちから時間を共有できる相手を見つけて共に今日一日を精いっぱい生きる方が、この人生に満足し安心して旅立てるような気がする。
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仏…フラマンビルの原発は…?

 【パリ時事】フランスメディアによると、9日午前10時(日本時間同午後6時)ごろ、仏北西部フラマンビルの原子力発電所で爆発があった。地元当局は、発生場所について「原子力施設の外部だ」とした上で、放射能被害の恐れはないと説明した。技術的な要因による事故で、テロの可能性はないとみられる。 〔写真特集〕福島原発〜水素爆発で大破した3号機原子炉建屋〜  現場にいた5人が煙を吸い込み、軽い中毒症状が表れているが、ほかに負傷者は出ていない。火災は約1時間後に沈静化した。同原発では爆発を受けて、一部原子炉の運用を停止した。  フラマンビルの原発は1985年に稼働が始まり、現在は新型の欧州加圧水型炉(EPR)の建設が進んでいる。原発から北約20キロには、日本などからの使用済み核燃料を扱う核燃料再処理工場がある。
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安倍トランプ会談

 しかし、「新潮45」の時任ルポは外務省筋の証言として、こうした見方をすべて「実際は違います」「真っ赤なウソ」と否定、実際は統一教会に近い安倍首相の側近議員が動いたと指摘しているのだ。 〈この側近は、これまで霊感商法や家族分断、合同結婚式など多数の被害を生み出してきたカルト集団・統一教会(現・世界平和統一家庭連合)およびその政治組織である国際勝共連合と選挙応援などを通じてかねて近しく、彼らがトランプ氏とホットラインを持っていることを知っていたのである〉  記事によると、側近議員から提案を受けた安倍首相は自ら統一教会系政治団体・国際勝共連合の重鎮であるYに直接、コンタクトを取ったのだという。Yは統一教会に協力的な「勝共推進議員」養成、自民党への秘書派遣や選挙協力など、同団体の政界への影響力行使の中心を担っていた人物。そして、安倍首相の意を受けてYは、統一教会開祖の文鮮明(故人)の妻で、現在の統一教会実質トップの韓鶴子に電話を入れたというのだ。記事では公安関係者が、韓のその後のトランプ陣営への働きかけをこう証言している。 「Yは彼女(韓鶴子)経由で、トランプ氏の信頼が厚く人事やスケジュール管理を行っている長女イバンカの夫、すなわち女婿であるクシュナーにつなげ、まずは即電話会談、それから安倍首相の外遊日程に合わせての直接会談??すなわち11月19 日からペルーで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会談前の17日に会えるよう運んだのです。韓と女婿が、それぞれ経営する新聞社や不動産会社などの関係からつながりがあったことから実現した話です」  たしかに、安倍首相と統一教会は切ってもきれない親密な関係だ。安倍首相の祖父・岸信介が国際勝共連合設立に関与していたことは有名な話だし、安倍首相自身も官房長官時代の06年、統一教会系の「天宙平和連合」の合同結婚を兼ねた集会に祝電を送るなど、統一教会への関与がしばしば取りざたされてきた。  また、安倍政権が発足して以降、統一教会と自民党との協力関係も非常に活発になっている。同記事にもあったが、13年の参院選では、安倍首相が強く推していた同郷の北村経夫参院議員を当選させるために統一教会が露骨な選挙支援をしているし、14年には、日本統一教会の徳野英治会長の特別講演で、安倍首相の側近である萩生田光一官房副長官が来賓のあいさつをしている。他にも、衛藤晟一首相補佐官や稲田朋美防衛大臣など安倍首相の側近議員の多くが統一教会系のイベントで講演を行っている。  さらに、15年の安保法制強行採決の際には、安保法制に反対するSEALDsに対抗するかたちで、安倍政権支持の活動を行うUNITEなる学生団体が出現したが、実はこの団体の正式名称は「国際勝共連合 大学生遊説隊 UNITE」。つまりその正体は「国際勝共連合」だったことも明らかになっている。


 しかし、だからといって、日米のトップ会談をカルト宗教団体に依頼するなんてことがありうるのだろうか。永田町ではこの「新潮45」の記事について「ガセ説」がとびかい、この記事を書いた時任のことを「ペンネームでトバシ記事を書きまくっている記者だ」と揶揄する情報も流れている。  だが、これは明らかに官邸によるカウンターだろう。「時任兼作」がペンネームで、その記事に毀誉褒貶があるのは事実だが、一方で時任はこれまで「週刊ポスト」「週刊現代」「週刊朝日」を舞台に、政治家や官僚、企業の不正を暴き、数々のスクープを生み出してもいる。とくに、統一教会については全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士らとタッグを組み、かなり核心に迫った記事を書いてきた。実は、前述した安倍の集団結婚式への祝辞も時任が「週刊朝日」(06年)で手がけたスクープだった。 「時任は統一教会、それと公安にはすごく強い。『新潮45』の記事は、公安関係者からの情報リークのようだから、信憑性はかなりあるんじゃないか」(週刊誌関係者)  実際、時任が指摘した韓鶴子?クシュナーのルート以外にも、トランプと統一教会の接点はある。宗教団体やスピリチュアルをめぐる社会的問題をリポートするウェブサイト「やや日刊カルト新聞」が、トランプの次男であるエリック・トランプが、統一教会の文鮮明教祖の四男・国進が経営する銃器製造販売会社KAHR Arms社の小型機関銃販売店舗オープニングイベントで演説を行っていたこと、トランプ当選にその国進と七男の亨進が大喜びしているところを写真付きで報じているのだ。  また、「新潮45」の記事では、この四男・国進と安倍首相が直接、会談したことを証言する七男のインタビューが存在していることを、全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士が明かしている。  こうしたさまざまな接点、状況を考え合わせると、安倍首相が統一教会に頼んでトランプ会談をセッティングしてもらっていたとしても不思議はない。そして、もしそうだとしたら、我々は近い将来、とんでもないツケを払わされることになるだろう。  国際勝共連合の機関誌「世界思想」2月号で、太田洪量・国際勝共連合会長がトランプ大統領誕生について書いているのだが、太田会長はこの中で「中国の覇権的攻勢を食い止めなければならない」と宣言したうえ、こう締めている。 〈安倍総理とトランプ大統領の世界平和に向かうタッグに大いに期待したい〉  そして、トランプは20 日に発表した基本政策で、「力による平和」を打ち出した。統一教会がつないだ安倍=トランプのタッグによって、日本が新たな戦争に巻き込まれる可能性はかなり高いといわざるをえない。 (野尻民夫)
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トランプ就任演説

ドナルド・トランプ新米大統領の就任演説は、約16分にわたった。以下が全文とその和訳。 Chief Justice Roberts, President Carter, President Clinton, President Bush, President Obama, fellow Americans, and people of the world: Thank you. ロバーツ最高裁長官、カーター大統領、クリントン大統領、ブッシュ大統領、オバマ大統領、同胞のアメリカ国民の皆さん、世界の人々、ありがとうございます。 We, the citizens of America, are now joined in a great national effort to rebuild our country and to restore its promise for all of our people. 私たちアメリカ市民は今、この国を再建し、国民全員への約束を復活させるため、大いなる国家的事業に取り組むべく団結しています。 Together, we will determine the course of America, and the world, for many, many years to come. 私たちは一緒になって、今後何年も続くアメリカと世界の進路を、定めていきます。 We will face challenges. We will confront hardships. But we will get the job done. 課題に直面するでしょう。困難に直面するでしょう。しかし、私たちはやり遂げます。 Every four years, we gather on these steps to carry out the orderly and peaceful transfer of power, and we are grateful to President Obama and First Lady Michelle Obama for their gracious aid throughout this transition. They have been magnificent. 4年ごとに私たちはこの階段に集まり、秩序ある平和的な権限の移行を行います。この政権移行の間、寛大に支援してくれたオバマ大統領とファーストレディのミシェル・オバマ夫人に感謝しています。お2人は素晴らしかった。 Today's ceremony, however, has very special meaning. Because today we are not merely transferring power from one administration to another, or from one party to another - but we are transferring power from Washington, D.C. and giving it back to you, the people. けれども今日の式典には特別な意味があります。なぜなら私たちは今日、単にひとつの政権から次の政権に、あるいはひとつの政党から別の政党に、権力を移しているだけではないからです。私たちは権力をワシントンから、国民の皆さんにお返しするのです。 For too long, a small group in our nation's capital has reaped the rewards of government while the people have borne the cost. 今まであまりに長いこと、この国の首都の少数の人たちが政府の恩恵にあずかり、国民がその負担を担ってきました。 Washington flourished - but the people did not share in its wealth. ワシントンは栄えたが、国民はその富を共有しなかった。 Politicians prospered - but the jobs left, and the factories closed. 政治家たちは豊かになったが、仕事はなくなり、工場は閉鎖した。 The establishment protected itself, but not the citizens of our country. 国の主流派は自分たちを守ったが、この国の市民は守らなかった。 Their victories have not been your victories; their triumphs have not been your triumphs; and while they celebrated in our nation's capital, there was little to celebrate for struggling families all across our land. 彼らの勝利はあなたたちの勝利ではなかった。彼らの成功はあなたたちの成功ではなかった。彼らはこの国の首都で祝っていたものの、国中各地で苦しむ家族たちにとって祝うに値することはほとんどありませんでした。 That all changes - starting right here, and right now, because this moment is your moment: it belongs to you. それは一切変わります。まさに今、ここで。なぜならこの瞬間は皆さんの瞬間だからです。これはあなたたちのものです。 It belongs to everyone gathered here today and everyone watching all across America. 今日ここに集まった全員のもの、アメリカ全土で見守っているすべての人のものです。 This is your day. This is your celebration. 今日はあなたの日です。これはあなたのお祝いです。 And this, the United States of America, is your country. そしてこの、アメリカ合衆国は、あなたの国なのです。 What truly matters is not which party controls our government, but whether our government is controlled by the people. 本当に大事なのは、どちらの党が私たちの政府を仕切っているかではなく、私たちの政府を国民が仕切っているかどうかです。 January 20th, 2017, will be remembered as the day the people became the rulers of this nation again. 2017年1月20日は、国民が再びこの国の指導者となった日として記憶されるでしょう。 The forgotten men and women of our country will be forgotten no longer. この国の忘れられた人々は、もうこれ以上、忘れられることはありません。 Everyone is listening to you now. 誰もが皆さんに耳を傾けています。 You came by the tens of millions to become part of a historic movement the likes of which the world has never seen before. 何千万人もの皆さんは、世界が今まで見たこともない歴史的な運動の一部になるため、参加しました。 At the centre of this movement is a crucial conviction: that a nation exists to serve its citizens. この運動の中心には、不可欠な確信があります。国は市民に奉仕するために存在するのだという確信です。 Americans want great schools for their children, safe neighbourhoods for their families, and good jobs for themselves. アメリカ人は子供たちのために最高の学校が欲しい。家族のために安全な地域が欲しい。そして自分たちのために良い仕事が欲しい。 These are the just and reasonable demands of righteous people and a righteous public. 正義の人々、そして正義の社会にとって、これは正当で道理のある要求です。 But for too many of our citizens, a different reality exists: Mothers and children trapped in poverty in our inner cities; rusted-out factories scattered like tombstones across the landscape of our nation; an education system, flush with cash, but which leaves our young and beautiful students deprived of all knowledge; and the crime and the gangs and the drugs that have stolen too many lives and robbed our country of so much unrealised potential. しかしこの国の市民のあまりに多くが、これとは別の現実の中にいます。都市の中心部では母親と子供たちが、貧困に囚われている。この国のあちこちで、さびついた工場が墓石のように散らばっている。資金を大量につぎこまれた教育制度は、若く美しい生徒たちに何の知識も与えないままだ。そして犯罪とギャングと麻薬が、あまりにも多くの命を奪い、あまりにも多くの可能性を実現しないままこの国から奪い去った。 This American carnage stops right here and stops right now. このアメリカ内部の殺戮(さつりく)は、まさにここで、たった今、終わります。 We are one nation - and their pain is our pain. Their dreams are our dreams; and their success will be our success. We share one heart, one home, and one glorious destiny. 私たちはひとつの国です。苦しむ人々の痛みは、私たちの痛みです。彼らの夢は、私たちの夢です。その成功は、私たちの成功となるでしょう。私たちはひとつの心、ひとつの家、そしてひとつの栄光ある運命を共有しているのです。 The oath of office I take today is an oath of allegiance to all Americans. 私が今日行う就任の宣誓は、すべてのアメリカ人に対する忠誠の誓いです。 For many decades, we've enriched foreign industry at the expense of American industry; 何十年も前から私たちは、アメリカの産業を犠牲にして外国の産業を豊かにしてきました。 Subsidised the armies of other countries while allowing for the very sad depletion of our military; この国の軍隊が悲しくも消耗していくのを許しながら、外国の軍隊を援助してきました。 We've defended other nations' borders while refusing to defend our own; 自分たちの国境防衛を拒否しつつも、外国の国境を守ってきました。 And spent trillions and trillions of dollars overseas while America's infrastructure has fallen into disrepair and decay. そしてアメリカのインフラが荒廃し衰退する一方で、海外では何兆も何兆もの金を使ってきました。 We've made other countries rich while the wealth, strength, and confidence of our country has dissipated over the horizon. 我々は、この国の富と力と自信が地平線の向こうで衰退していく間に、よその国々を金持ちにしてきたのです。 One by one, the factories shuttered and left our shores, with not even a thought about the millions and millions of American workers that were left behind. 工場はひとつひとつ、次々と閉鎖し、この国を出て行きました。取り残された何百万人ものアメリカの労働者のことなど、何ひとつ考えないまま。 The wealth of our middle class has been ripped from their homes and then redistributed all across the world. この国の中産階級の富は無理やり奪い取られ、世界中に再配分されていきました。 But that is the past. And now we are looking only to the future. しかしそれは過去のことです。そして今の私たちは、ただひたすら未来だけを見つめています。 We assembled here today are issuing a new decree to be heard in every city, in every foreign capital, and in every hall of power. 今日ここに集まった私たちは、すべての都市、すべての外国の首都、そしてすべての権力の回廊に聞かせるため、新しい布告を発します。 From this day forward, a new vision will govern our land. 今日から今後は、新しいビジョンがこの国を統治します。 From this day forward, it's going to be only America First, America First. 今日から今後は、ただひたすら「アメリカ第一、アメリカ第一」です。 Every decision on trade, on taxes, on immigration, on foreign affairs, will be made to benefit American workers and American families. 貿易、税金、移民、外交に関するすべての決断は、アメリカの有権者とアメリカの家族の利益となるよう行われます。 We must protect our borders from the ravages of other countries making our products, stealing our companies, and destroying our jobs. Protection will lead to great prosperity and strength. 私たちは、私たちの製品を作り、私たちの企業から盗み、私たちの職を破壊する外国の侵害から、この国の国境を守らなくてはならない。保護によって、繁栄と力は拡大します。 I will fight for you with every breath in my body - and I will never, ever let you down. 私は自分の命すべてをかけて皆さんのために闘います。そして決して、絶対に、がっかりさせません。 America will start winning again, winning like never before. アメリカはまた勝ち始めます。かつてないほど勝ち始めます。 We will bring back our jobs. We will bring back our borders. We will bring back our wealth. And we will bring back our dreams. この国の仕事を回復させます。国境を回復します。富を回復させます。そして私たちの夢を復活させます。 We will build new roads, and highways, and bridges, and airports, and tunnels, and railways all across our wonderful nation. 私たちはこの素晴らしい国の全土で、新しい道路、高速道路、橋、空港、トンネル、鉄道を造ります。 We will get our people off of welfare and back to work - rebuilding our country with American hands and American labour. 国民がもう生活保護を必要としないように、仕事に戻れるようにします。この国をアメリカ人の手とアメリカ人の労働で再建します。 We will follow two simple rules: Buy American and hire American. 私たちは2つの素朴なルールに従います。アメリカのものを買い、アメリカ人を雇うのです。 We will seek friendship and goodwill with the nations of the world - but we do so with the understanding that it is the right of all nations to put their own interests first. 私たちは世界の国々との間に友情、そして友好を求めます。しかしその前提には、すべての国は自国の利益を優先する権利があるという認識があります。 We do not seek to impose our way of life on anyone, but rather to let it shine as an example - we will shine - for everyone to follow. 私たちは自分たちの生き方をほかの誰にも押し付けようとはしませんが、むしろお手本として輝くように、私たちは輝きますから、ほかの人たちが見習うべきお手本として輝くようにします。 We will reinforce old alliances and form new ones - and unite the civilised world against radical Islamic terrorism, which we will eradicate completely from the face of the Earth. 私たちは古い同盟関係を強化し、新しい同盟を結びます。そして、文明世界を一致団結させて、イスラム過激主義のテロと戦います。イスラム過激主義のテロは、この地上から完全に消し去ります。 At the bedrock of our politics will be a total allegiance to the United States of America, and through our loyalty to our country, we will rediscover our loyalty to each other. 私たちの政治の礎となるのは、アメリカ合衆国に対する完全な中世です。そして自分たちの国への忠誠心を通じて、私たちはお互いへの忠誠心を再発見するでしょう。 When you open your heart to patriotism, there is no room for prejudice. 自分の心を愛国心に向けて開けば、偏見が入り込む余地はありません。 The Bible tells us: "How good and pleasant it is when God's people live together in unity." 聖書はこう教えています。「神の人々がひとつになって暮らすのは、なんて善い、心地良いことでしょう」と。 We must speak our minds openly, debate our disagreements honestly, but always pursue solidarity. 私たちは思ったことを自由に発言し、意見が違えば議論しなくてはなりませんが、常に連帯を目指すべきです。 When America is united, America is totally unstoppable. アメリカが団結すれば、アメリカを食い止めることなど不可能です。 There should be no fear - we are protected, and we will always be protected. 恐れるべきではありません。私たちは守られているし、常に守られていくので。 We will be protected by the great men and women of our military and law enforcement and, most importantly, we will be protected by God. 私たちは軍隊と法の執行機関の偉大な人々に守られているし、何よりも神が私たちを守ってくれます。 Finally, we must think big and dream even bigger. 最後に、私たちは大きく考え、さらに大きく夢見なくてはなりません。 In America, we understand that a nation is only living as long as it is striving. アメリカの私たちは、国とは努力し続けなければ生き続けられないものだと理解しています。 We will no longer accept politicians who are all talk and no action - constantly complaining but never doing anything about it. 私たちは、口先だけで行動しない政治家をもうこれ以上受け入れません。文句を言うだけで何もしない政治家など。 The time for empty talk is over. 空虚なお話の時間はもう終わりです。 Now arrives the hour of action. 行動の時がやってきました。 Do not allow anyone to tell you that it cannot be done. No challenge can match the heart and fight and spirit of America. そんなことは無理だと誰かに言われても、決して信じてはいけません。アメリカの心とファイトとスピリットに勝る挑戦などありません。 We will not fail. Our country will thrive and prosper again. 私たちは失敗しません。私たちの国は再び、栄えて繁栄します。 We stand at the birth of a new millennium, ready to unlock the mysteries of space, to free the Earth from the miseries of disease, and to harness the energies, industries and technologies of tomorrow. 私たちは新しい千年紀の誕生と共にあります。宇宙の神秘の扉を開き、病の苦しみから地球を解き放ち、未来のエネルギーや産業や技術を活用しようという、その時に立っています。 A new national pride will stir our souls, lift our sights, and heal our divisions. 国民としての新しい誇りが私たちの魂でうごめき、展望を引き上げ、分断を癒してくれるでしょう。 It is time to remember that old wisdom our soldiers will never forget: that whether we are black or brown or white, we all bleed the same red blood of patriots, we all enjoy the same glorious freedoms, and we all salute the same great American Flag. この国の兵士たちが決して忘れない古い格言を思い出すべき時です。黒だろうが茶色だろうが白だろうが、私たちは全員が、赤い愛国者の血を流すのだと。全員が同じ素晴らしい自由を享受し、全員が同じ偉大なるアメリカ国旗に敬礼するのだと。 And whether a child is born in the urban sprawl of Detroit or the windswept plains of Nebraska, they look up at the same night sky, they fill their heart with the same dreams, and they are infused with the breath of life by the same almighty Creator. そして大都市デトロイトの裾野(すその)で生まれようが、風吹きすさぶネブラスカの平原で生まれようが、同じ夜空を見上げた子供は、同じ夢で心を満たし、同じ偉大なる創造主によって生命を吹き込まれるのです。 So to all Americans, in every city near and far, small and large, from mountain to mountain, and from ocean to ocean, hear these words: なのですべてのアメリカ人は、この言葉を聞いて下さい。あらゆる都市にいる人、遠い近いを問わず、大小を問わず、山から山へ、海から海へ、聞いて下さい。 You will never be ignored again. あなたは二度と無視されたりしません。 Your voice, your hopes, and your dreams, will define our American destiny. あなたの声、あなたの希望、あなたの夢は、私たちアメリカの運命を決定するものです。 And your courage and goodness and love will forever guide us along the way. そしてあなたの勇気と善と愛が、永遠に私たちを導いてくれます。 Together, we will make America strong again. 一緒に、アメリカをまた強くします。 We will make America wealthy again. アメリカをまた豊かにします。 We will make America proud again. アメリカをまた誇り高くします。 We will make America safe again. アメリカをまた安全にします。 And, yes, together, we will make America great again. そしてそうです。一緒に、私たちはアメリカをまた偉大にするのです。 Thank you, God bless you, and God bless America. Thank you. God bless America. ありがとう。神様の祝福を。神様がアメリカを祝福しますように。ありがとう。神様がアメリカを祝福しますように。 (英語記事 Trump inauguration: Full text of new president's speech)
photo by wataru -
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LOVE
どちらにしろ、生きてくってことは愛すること。 そして許すことだ。 でも、それが上手く言えない。 それを上手く伝えられない。 だから愛なんだ・・・

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